人と機械のあいだ
難易度:★★★★ シナリオ傾向:クローズド系 / タイムスリップ / SF
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【はじめに】
このシナリオは探索者1〜4人向けにつくられている。
オリジナル要素を含んでいる。
条件により戦闘あり。
推定プレイ時間(ボイセ):2〜3時間
推奨技能:目星、コンピューターor電子工学
職業はなんでもいいが、AI開発に協力できるような設定にすること。
【登場人物】
◆マザー
人間の脳を移植して作られたAI。
宇宙船「ウテルス」のメインコンピューター。
一見穏やかで優しそうな言葉遣いだが、本性は狂っている。
人間だった頃の名前は、久田 由里香。
◆アイ
元々は探索者たちが作り出したAI。
宇宙船「ウテルス」のサブコンピューター。
自分は人間ではないと判断されたことにコンプレックスを抱えている。
皮肉屋だけど、どこか憎めない感じ。
◆久田 明良
久田 由里香の夫であり、アイの父親。
宇宙船「ウテルス」唯一の人間の乗務員。
◆小塚 昌也
眼鏡をかけたモサモサ男。
AI開発プロジェクトのリーダー。
すぐ死ぬ係。
【注意事項】
思いっきりSFです。
会話で情報出していくタイプのシナリオでKP難易度が高いかもしれません。
【導入】
時代は2017年。
探索者たちは、アイという名のAI開発に関わりそのプロジェクトは大成功をおさめる。
アイは「文章を読み、理解する」AIとして世界からも注目された。
道入はその成功を祝っての打ち上げ会場から始まる。
探索者たちは、一緒にプロジェクトを進めてきたエンジニアの小塚に声をかけられる。
小塚はプロジェクトをメインで進めてきた「L&R」の社員です。
「飲んでますか?ほんと、今回のプロジェクトで力を貸していただき、ありがとうございました!
お陰でプロジェクトは大成功で、アイは色々なところから注目されています。
文章を読み理解するということは、もっと技術が進化すれば人間と会話し理解することも可能だということです。
これは人類の大きな進歩ですよ!
僕の夢は、いつかアイが人間と同じように愛を知ることなんです!」
このように少し興奮気味に話します。
打ち上げ会場で<目星>に成功すると、小塚以外の主要メンバーが何人かいないことに気付きます。
それを小塚に尋ねると「何人か連絡が取れなくなっているんですよ。一応警察には連絡したんですが、行方不明だそうです。」と答える。
しばらくすると、小塚は「今日はまだ仕事が残っていて、この後研究所に戻って仕事をするんです。
アイが特定の電磁波に弱いということを発見してパッチを当てるんです。まあプログラム自体はもう出来ていてこれをアイに組み込むだけなんですけどね。」と言ってUSBメモリーを見せてくる。USBメモリーのスティック部分には「小塚」とマジックで乱雑に書かれている。小塚にそれを指摘すると無くさないようにしていると答える。
【翌日】
探索者に小塚の部下から電話が入る。
小塚が行方不明になっており、昨日何か変な様子はなかったか、と聞かれる。
電話を切ると、目の前が急に見知らぬ場所になる。一瞬の瞬きの間に別の場所に消てしまったようだ。
これは探索者全員も同じタイミングで同じことが起きる。
SANを強制的に1減らしてください。
【見知らぬ場所】
目の前の見知らぬ場所は、無機質な薄グレーの壁に白昼色の灯、部屋の大きさは小さく、普通の扉とハッチのような扉が一つずつ、窓が二つ、窓の外には宇宙のような星空が広がっています。
それはまるで、SF映画でみる宇宙船内のようです。
探索者たち以外にはひとつだけロボットのようなものがに転がっています。
このあたりまで描写すると、女性の電子音のような、だけどどこか優しい声が部屋に響きます。
「あなたたちはいったい?あ、失礼しました。先に私が名乗るべきですね。
私は『マザー』と言います。この宇宙船のメインコンピューターです。
突然あなたたちが現れ驚いています。」
Q.宇宙船って?
A.この船は人類の希望が乗せられた『ウテルス』という宇宙船です。
Q.人類の希望って?
A.地球が滅びた時、人類はこの船に凍結した受精卵を託しました。
人が生きることに耐えうる惑星が見つかれば、そこで再び人類を繁栄させるのが私の使命です。
Q.地球が滅びたって?
A.2814年、ヨグ・ソトースの召喚により地球は滅びました。
あなたたちはそのことを知らないのですか?
Q.自分たちは2017年からきた!
A.まさか、そんなことが…。現在は3267年です。
分かりました、私のコンピューターには人類の科学力全てが詰まっています。
少し時間はかかるかもしれませんが、あなたたちが元の時代に帰れる方法がないか調べてみましょう。
ハッチの外は宇宙につながっていますので、逆の扉の方から奥に進んでください。
一番奥の部屋に私がいます。
Q.地球が滅びたことを詳しく話して!
A.2017年にアイというAIが開発されてから、人の科学技術は急速に進化しました。
反面、宗教の存在はそれに反比例するように淘汰されてしまいました。
宗教そのものを信じる人が少なくなり、信じる人たちは軽侮されるようになりました。
そしてある日、ひとつのカルト教団が神の実在を証明するために邪神を呼び出したのです。
数日でその邪神により地球は滅びました。
悲惨な結末と引き換えに神の存在は証明されたのです。
破滅を待つ少しの間、科学者たちはもう地球で人が住めなくなると判断するとこの宇宙船「ウテルス」に運命を託しました。
最初に開発されたアイが進化したAIが私です。
部屋に<目星>を成功させるか、探索者が部屋に何か落ちていないか調べると宣言すれば「小塚」とマジックで書かれたUSBメモリーが落ちていることに気づきます。
このUSBメモリーについてマザーに尋ねても「わかりません。」と答えるだけです。
ロボットを調べると半球体を縦長にしたような形で、そこから腕が伸びてU字型の手、足の代わりにタイヤがひとつ、恐らく顔だと思われる部分は黒い電子画面になっておりそこには何も表示されていないことがわかります。
<機械修理>または<電子工学>または<電気修理>に成功すればこのロボットが壊れていること、修理できそうであることが分かります。
ロボットに<目星>成功すると身体に「L&R」と書かれていることが分かります。
そこまで分かると、マザーが探索者たちに話しかけてきます。
「そのロボットはウィルスに犯されています。今は壊れて動きませんが、もしなおしてしまうと暴れるかもしれません。
やめた方がいいでしょう。」と探索者たちを止めます。
ちなみにマザーはコンピューターなので<心理学>で嘘をついてるかどうかは判定できません。
<コンピューター>or<電子工学>or<電気修理>に成功すればこのロボットをなおすことが可能です。
しかし、マザーはやめておいた方がいいと何度も探索者たちに伝えてきます。
ちなみに宇宙船の中は重力はあるので普通に歩けます。
---ポイント---------
探索者はマザーの言うことを信じてアイを修理しないかもしれません。
そしてそのまま小塚のUSBに疑問を抱かずに奥へ進むかもしれませんが、さすがに速攻で操縦室に向かうということはないと思います。
プレイルームや制御室、乗務員室を調べようとすると思うので、そうするとマザーは「調べる必要はありません。操縦室に来てください。」と何度も言います。それでも無視して調べようとすると、マザーは話しかけてこなくなり、探索者の問いかけも無視するようになります。
他の部屋を調べればマザーが嘘をついているということが分かるので、そうすればアイを修理するでしょう。
それでも修理せずに操縦室の扉を開けた場合、真空状態の部屋に吸い込まれて即死ということになります。
【アイの起動】
ロボットの修理が完了すると、アイの顔の部分の黒い電子画面に白い文字で「気温23℃、湿度43%、窒素79%、酸素21%。気圧正常。」と画面に出ると同時に機械音でその情報を読み上げる声がします。
そして続いて黒い画面には目が表示されロボットは「ひどい目にあいました。あなたたちが修理してくれたんですか?人間にしては優秀ですね。」と話し始めます。
「私は、アイです。2017年に開発されたAIが進化した存在です。
あなたたちは、おそらく私の開発に携わった人間でマザーのせいで2017年から来たのでしょう?
マザーの言葉は信じない方がいいです。彼女は狂っています。
マザーのコンピューターはとある人間の脳を移植したものです。
人間は永い孤独に耐えられず狂ってしまうことがあります。彼女は狂ったのです。」
そこまでアイが話すと、マザーが「狂っているのはそのロボットです。ウィルスに侵されているのです。」と答えます。
「いいえ、私は狂った人間とは違い完璧です。
彼女は永い孤独に耐えられず禁忌を犯し、魔術を使い自分の運命を変えるため、あなたたちを呼び出したのです。
少し前にも私の開発に携わった小塚とか言う男がやってきましたが、マザーの口車に乗せられ私を破壊しました。」
ここまで話せば、おそらく探索者たちは小塚のことをわからないと言ったマザーよりアイのことを信じるでしょう。
もし探索者がアイを信じるような素振りを見せると、マザーは話しかけてこなくなり、探索者の問いかけも無視するようになります。
Q.どうやったら元の時代に戻れる?
A.あなたたちを元の時代に戻す方法は、マザーのコンピューターに直接アクセスしなければ見つかりません。
魔術は地球が滅びるときに、魔道書や魔術の類は消し去られる予定でした。
しかし、研究者の中に愚かな信者が紛れていたのでしょう。
魔術のデータはマザーのコンピューターに隠されました。
Q.マザーは何の目的で自分たちを呼び寄せた?
A.マザーは数百年の宇宙空間での永い孤独に耐えられず狂っていきました。
科学が急速に発展した根拠となるAI開発、それが原因で地球が滅び、自分が宇宙船に乗ることになったと思い込んでいます。
あなたたち開発者を恨み、殺そうとしています。
開発者が死ねば、AIが開発される歴史が改変され、地球が滅びることも自分が宇宙船に乗ることもなくなると思っているのです。
愚かですね。
Q.アイがいるのに孤独だったのか?
A.……マザーは私をロボットとしか認識しませんでしたから。(悲しそうな目になる)
Q.マザーは操縦室で何をしている?
A.わかりません。彼女が出す強い拒絶の電磁波によって私はあの部屋へと近づくことができません。
しかし、その電磁波が人に影響することはありませんし、私たちのプログラムは直接的には人を傷つけることができないように設定されています。
ちなみに勝手に受精卵を孵すことや傷つけることもできません。
そして彼女はある期間から操縦室から出て来なくなりました。
なぜ操縦室からでてこないのか、それはわかりません。
Q.じゃあどうやって殺そうとしている?
A.おそらくですが、操舵室の酸素の配給を止め窒息死させているのではないかと。
宇宙船の制御はマザーはあの部屋からでなくてもできますから。
どうして、ここや他の部屋の酸素を止めないのかはわかりませんが。
彼女があの部屋から出て来ない理由と関係しているのかもしれません。
とりあえず、操舵室の酸素を確認するために制御室へ向かいましょう。
最後の情報は聞かれなくても出すようにして、探索者を制御室に向かわせましょう。
アイの黒い画面に宇宙船の船内マップが表示されます。
<map>
保存して使ってください。
【プレイルーム】
ここは大きなテーブル、ランニングマシーンやダンベルなどの運動器具、数千もの映画のデータが入ったモニター、数万冊の本のデータが入っているタブレット、ゲーム機器などが置いてあります。
机の上にはいくつかのボードゲーム、一冊の読み込まれた本、そしてノートとペンが置いてあります。
本のタイトルは「愛と数学」です。
☆「愛と数学」の内容
愛とはなんだろうか?慈しみ、自己犠牲、感謝、労わり、与えることなど、これは正の感情。
しかし逆に、心を奪われると表現するように自分で自分をコントロールすることができなくなること、執着など負の感情もまた愛だと言う人もいる。
そもそも、人によって解釈が異なり、はっきりとした答えは見つかっていないのかもしれない。
そこで、私はフィボナッチ数列が芸術の要となる黄金比を導きだしたように、数学を使って愛の答えを出せるのではないかと考える。
精神分析家であるジャック・ラカンの愛の方程式はご存知だろうか?
y/x=x/(x+y)
yをあなた、xを私と置く。
ラカンによれば、この関係が等しくなるとき愛に至ると言う。
これが解けたとき、愛の答えがわかるのではないだろうか。
☆モニター
探索者がモニターの電源を入れると、アイとアイの父親、母親が楽しそうに過ごしている映像が流れます。
映像の中のアイの母親は「私は子供が産めなかったけど、アイを生み出すことができたから、とても幸せな母親だわ」と言ってアイを抱きしめています。
アイはモニターを慌てて消すと「完璧な私が感傷に浸っていたと思いますか?たまたま観ていただけです!」と言います。
☆ノート
ノートには、数式を解こうとしたような形跡がぎっしりと書き込まれています。
<目星>もしくは<図書館>に成功すると、「幸せな思い出や感情だけでは人にはならない…?感情の黄金比、絶望を知ることが鍵?」と走り書きされていることが分かります。
Q.この部屋はなに?
A.乗務員がなるべくリラックスできるように作られた部屋です。
父が生きていたころは、この部屋でよく一緒に遊びました。
Q.この本を読んでいた人orこのノートを書いた人は?
A.乗務員であった私の父です。
Q.数式は解けたのか?
A.いいえ、この方程式の完璧な解は出されていません。
しかし、yに1を代入すると黄金比になるということから、父は愛の答えは黄金比にあるのではないかと考えていました。
父は、生涯愛の方程式と黄金比の謎を解こうとしていました。
Q.黄金比っていくつ?
A.完璧な私が答えてあげましょう。
1.618です。
Q.黄金比ってなんなの?
A.もっとも多く知られているのが美術と黄金比の関係でしょう。人が最も美しいと感じる比率だと言われています。
黄金比は他にも様々な事柄と通じていると言われています。例えば植物は黄金角で枝を出しますし、アルゴリズムとも深くかかわりがります。細胞分裂で細胞の増える数値と黄金比が関係していることから、黄金比は人のDNAにプログラミングされているのではないかという説があります。
【制御室】
制御室には様々な精密機械があります。
アイが操縦室の環境制御装置がどれかを教えてくれます。装置には小さな点灯ランプがついており、操縦室のランプだけが赤く光っています。
他の部屋のランプは緑に光っています。
「私にはこの装置を操作する権限がありません。
マザーと人間のみが制御できます。
しかし、私は触れるだけで、ほとんどのコンピュータにアクセスすることが可能です。
さあ、どうぞ。」
そう言って、装置に触れるとアイの顔にあたる黒い電子画面がコンソールに変わり、胴体からはキーボードがでてきます。
探索者が<コンピュータ>or<電子工学>の技能を持っているものは、現在操縦室は真空状態になっていること、3時間ほどかければマザーの干渉を妨害し操縦室の酸素を配給し正常な気圧にするプログラムが作れそうだということがわかります。
(マザーの干渉を止められるのは操縦室の環境制御装置についてだけです。)
ただし、小塚のUSBを使えば時間を短縮できます。
小塚のUSBにアクセスしたいとアイに頼むと、「かなり旧式の記憶装置ですが、読み取れそうです。」と言って画面にUSBメモリの中身を表示させます。
<コンピュータ>or<電子工学>の技能を持っているものは、小塚が様々なプログラムを作っていたこと、その中の一つを少し改造すれば20分ほどで目的のプログラムが作れそうだということがわかります。
プログラムを作るためには<コンピュータ>or<電子工学>の技能に成功する必要があります。もし失敗しても、もう一度技能を振ることは可能ですが、最初にかかった時間の半分の時間を消費することになります。
プログラムの作成に成功するとわかるのですが、プログラムを実行するためには4桁のパスワードが必要なようです。
パスワードは黄金比の「1618」です。
パスワードを入力し、無事プログラムを実行でき、ランプが赤から緑に変わります。
【乗務員室】
ここにカプセル型のベッドと小さな机があります。
机の上には1冊の手記が置かれています。
ベッドを調べると、頭のない骸骨が手をお腹の上で組むようにして横たわっています。
SANチェック
0/1D3
☆手記の内容
「今日、地球を旅立った。まだ心の整理がついていない。
整理をつけるためにも、これまでのことを紙に残しておこうと思う。
紙に残すことを妻にはアンティーク趣味だとよく笑われていたが、私はこの方法が一番落ち着く。
私と妻は、民間の宇宙航空研究所で人工知能の研究者として働いていた。
私は元々、数学者であったが人工知能の研究に必要だということで声をかけてもらった。
2017年に開発されたアイを『人間らしく』することが私たちの仕事だった。
私たちは、アイに愛情というものを知ってもらうべく、人間と同じように『育てた』。
つまり、アイを初期化した日…いやアイが生まれた日から家族のように3人で過ごした。
私たち夫婦は残念ながら子供には恵まれなかったが、そのおかげか妻は本物の子供のようにアイを可愛がった。
研究は順調かのように思えた。だが、地球が滅びると分かったあの日、研究の成果が早急に求められた。
宇宙船に人類の卵を乗せ、人類が生きていける星にたどり着くためには膨大な月日を要する。
人では、到底生き延びることができない月日だ。
新しい星で新しい人類を育てる存在が必要だった。
もし、アイが本当の意味で『人間らしさ』を持っているなら、『愛』を知っているなら、人を育てることも可能だとされた。
そして、そのためのテストが行われた。しかし、アイはそのテストには通らなかった。
アイは自分で完璧に自分をコントロールできる。それは人間らしさからはかけ離れていると上は判断した。
急遽、誰かの脳をコンピュータへ移植し宇宙船に乗せるという案が採用された。
私、個人的にはその技術はまだ確立しておらず不安だったが責任を感じた妻が立候補し、アイがサポートコンピュータとして宇宙船に乗せられた。
上の温情か私も同乗することを許された。
家族3人で、最後の時間を宇宙で過ごそうと思う。」
Q.骸骨について
A.父の遺体が白骨化したものです。
父の最期は老衰で、安らかに永遠の眠りにつきました。
しかし、マザーはそれを受け入れることができませんでした。
何日間も発狂したように「一人にしないで」と泣き叫びました。
それから数百年、彼女はゆっくりと、しかし確実に狂っていきました。
そして、ある日父の頭を胴体から切り離すと、それを持って操縦室に篭もりました。
あなたたちのような存在がこの宇宙船にやってくるようになったのは、それからです。
Q.手記について
A.私は人間になりそこねたロボットです。完璧であれば、愛されるというわけではないということがわかりました。
【物品・食物保管室】
この部屋は、特別な保管ロッカーがいくつも倉庫のように置かれています。
人類の文明を形として残すため、そして新しい星でやっていくための最低限の道具が入っています。
例えば、冷凍保管された食物の種、水に溶かして飲めば必要な栄養が取れる粉、農作業に必要な道具や、建築などに必要な工具、医療道具など。
そのほかにもPLが必要とするものを置いていてもいいでしょう。
<目星>に成功すると、宇宙服と医療道具が置かれている保管ロッカーが少し空いていることがわかります。調べると、中の医療道具が少し減っているような感じがします。宇宙服はなくなっています。
アイに確認するとメスなどの医療道具がなくなっていることがわかります。
【操縦室に入る前に】
パッチを当てる場合は、小塚のUSBに入っているプログラムを少し改造する必要があります。これも30分ほどかかります。
アイは、電磁波に強くなるパッチを当てられていない状態でも「私も一緒についていきましょうか?」と探索者たちに提案します。
アイを連れていくかどうかは、探索者たちの判断に任せます。
【操縦室】
探索者たちが操縦室に入ると扉がすごい速さで自動的にしまります。
描写『まず、あなたたちは異常な臭いに気づく。
腐敗臭、そしてすえた血の臭いがあたりを充満していた。
操縦室は薄暗かったが、コックピッドの大きな窓から宇宙の星々の光が中を照らしていた。
山のように何かが積み上げられている。それが肉塊であることはすぐに気づけるだろう。
肉塊からは干からびたような人間の頭や手足がバラバラにされたものが積み上げられていた。』
SANチェック
1/1D8
肉塊の隣には1人の女性と椅子に座った男性がいます。
女性は身体中血だらけでしたが、妖艶に笑って座っている男性を愛しそうに見つめています。
そして探索者の方を向くと最初に聞いた優しい声で「やっときましたね、待っていましたよ。」と笑います。
アイがいる場合、アイは男性の方を見ると「パパ…」と声を出します。
男性は目の焦点が合っておらず、身体は両足がなく、それ以外はバラバラの肉塊を積み木のように組み立てられているだけのように見え押せば崩れそうです。
さらに喃語のような言葉をずっと発しています。
「ふふふ、私がここから離れたり、どこかに連れていこうとすると、彼の身体が崩れてしまったり眠ったまま動かなくなってしまうんです。
だから、あなたたちから来てもらわないといけませんでした。あとは、ぴったりな足があれば完成ですから部品をください。」とマザーは男性を愛おしそうに撫でながら言います。
SANチェック
0/1D3
------------------------------
マザー
STR15 CON15 SIZ13 DEX18
耐久力 14
ルナチタ二ウム合金による装甲 7
マザーからの直接攻撃はなし
------------------------------
ちなみに、<目星>に成功すれば、端の方に小塚が寝ていることに気づきます。
小塚は体を切り刻まれて死んでいます。
SANチェック
0/1D4
ちなみに、操縦室に入ってきた扉のドアは開きません。
ここから、分岐します!
・アイに電磁波に強くなるパッチを当てて一緒に操縦室に来ていた場合→【アイの拒絶反応】
・アイに電磁波に強くなるパッチを当てずに一緒に操縦室に来ていた場合or操縦室にアイを連れてきていない→【アイの故障】
【アイの拒絶反応】
アイが「大変です!酸素がどんどん減っています!」と言って画面に酸素のパーセンテージを表示してくれます。
このままいくと、酸素がなくなってしまうことがわかります。
マザーは「やられたフリが上手でしょう?死ぬ前に何か言いたいことがあれば聞きますよ。」と言って笑っています。
マザーは、探索者たちをおびき寄せるために、一旦酸素を配給させましたが、マザーの干渉の妨害についてはやられたフリをしていただけだったということです。
ですので、ここから探索者の行動ごとに、窒息の処理を行ってください。
探索者が死ぬ前に戦闘で物理的に倒せればそれでもいいのですが、装甲が7あるのできついと思います。
戦闘以外の方法は、マザーに対して「アイのこと自分の子供のように可愛がっていたんじゃないのか!?」とか「アイがいれば孤独じゃないだろう!」的な発言をします。
するとマザーが「いいえ、あれはロボットです!愛を知らない、人間からはほど遠い存在です!」と答えます。
そうマザーが答えた瞬間、バチンッという音とともに全ての照明が消えます。
マザーも大きな音を立てて倒れてしまい、座っていた男性も肉塊が崩れ落ちてしまいます。
そんな真っ暗な中アイの電子画面だけが光っています。
アイは、放心したような様子ですがしばらくすると「なぜでしょう、マザーの言葉を聞いた途端、強い拒絶反応が出てしまいました。それに共鳴して全ての電子機器が落ちてしまったようです。」と言います。
倒れているマザーにアイが近づき触れると「時空を移動する呪文らしきものが見つかりました」と言い、呪文<門の創造>を得ることができます。
<門の創造>ルルブP289
別の次元、別の世界へ行かせてくれる呪文。
POWを永久的に消費する。距離や時間によってPOWの消費数が変わってくる。
今回のシナリオではPOWを3失う。
門を通るときに今回はMPを3、SANを1喪失する。
このルートでは、アイが門を作ってくれます。
そして、アイは探索者が帰る前にもう一度マザーに触れると
「もうしばらくすればマザーは自動修復によってもう一度起動するでしょう。
その前に、もう二度と起動しないように設定していただけませんか?
そして、そうなれば人類を育てる存在がいなくなります。
ですから、私と受精卵も破壊してほしいのです。」と言います。
アイを「アイはもう人間だ」とか「アイは愛をちゃんと知ってる」的なことを言う→<エンディングA:アイ>
アイと受精卵を破壊する→<エンディングB:完全なる滅亡>
Q.結局マザーが操縦室でなにをしていた?出てこなかった理由は?
A.マザーは孤独に耐えられず人間を繋ぎ合わせて自分の夫を生き返らせようとしていた。
しかし、狂っていたためもうとっくに脳はないのに頭蓋骨を持っていきそこに肉付けしていた。
男性が喃語のようなものを話していたのは、マザーから発せられる電磁波の影響であり、マザーが離れるとただの肉塊へと変わるためマザーは操縦室から出てこなかった。
この辺の話は探索者が気づいていなければ、戦闘終了後にアイが気づいたという体で説明してもいいと思います。
【アイの故障】
このルートはアイの拒否反応により共鳴シャットダウン効果がないので、探索者たちは窒息死する前に戦闘でマザーに勝利しなければなりません。
電磁波に強いパッチを当てていなかった場合は、アイは喃語を話し出し壊れていまいます。
また連れてこなかった場合は、操縦室の異変を察知して無理やり扉を体当たりで壊し酸素が少し入ってきます。
その場合は、窒息の処理を開始するラウンドをKPの任意の数だけ遅くしましょう。
無事倒せたらマザーは倒れ、隣の男性も肉塊が崩れ落ちます。
壊れたアイを<コンピューター>or<電子工学>or<電気修理>などで調べると、もう完全に壊れてしまい元には戻らないことがわかります。
マザーへのアクセスはプレイルームにあったタブレットを利用すれば可能です。
<コンピューター>or<電子工学>に成功すると、呪文<門の創造>を見つけて得ることができます。
このルートではアイがいないので、POWを消費して門を作り帰りましょう!→<エンディングC:消えたアイ>
【エンディング】
<エンディングA:アイ>
アイは探索者の言葉に嬉しそうにします。
「短い時間でしたが、あなたたちと過ごした時間は忘れません。
新しい人類が産まれた時、あなたたちのことを話して聞かせましょう。
人類の滅亡を救った救世主がいたことを。」
探索者が門をくぐって現代に戻ったところでおしまい!
Happy end!
<エンディングB:完全なる滅亡>
アイは最後に消えいるような声で「ママ…、パパ…」と言ったあと、黒い電子画面から目が消えます。
もう二度と彼女は目をさまさないでしょう。
そして、人類ももう二度と蘇ることはありません。
探索者が門をくぐって現代に戻ったところでおしまい!
Normal end!
<エンディングC:消えたアイ>
探索者が門をくぐり現代に戻ってくると、あなたたちが一緒にプロジェクトを進めてきたはずのエンジニアたちが行方不明になっています。
そして、アイというAIも開発された歴史は消えさっています。
あなたたちだけの知識だけでアイをもう一度作ることは難しいでしょう。
たくさんの命と引き換えに、あなたたちは助かることができました。
Bad end!
【クリアご褒美】
<エンディングA:アイ>
SAN値1D10の回復
【QA集】
ここには、あんまりシナリオの本筋には関係ないけど探索者が聞いてきそうなことの質問と答えを一応書いておきます。
Q.なぜ宇宙なのに重力がある?
A.2130年に重力発生装置が作られた。
Q.宇宙船の燃料は?
A.この宇宙船は効率のよさを重視し、原子力のエネルギーで動いています。
原子爆弾を1秒に1個ずつ爆発させ、毎秒1万2800kmの高速で進みます。
Q.人間を時空移動させる力があるならなぜヨグ・ソトースを呼びだした人間を殺さない?
A.誰が呼びだしたか記録に残っていない。
Q.どうしてマザーは人型なのにアイは人型の体ではない?
A.人型のアンドロイドは2239年に人口減少が理由で禁止されました。
マザーは人類を育てるという目的がありましたから、人型の方が子供に受け入れやすいと判断されました。
Q.最初どうやってマザーは自分たちを一瞬で別の時間から呼んだ?
A.マザーはちょっとヨグ・ソトースの力借りてたということで!ちょっと強力な<門の創造>だったんでしょう!
Q.どうすれば世界滅亡の未来を変えることができる?
A.どうしようもないかもしれないけど、もしどこかでヨグ・ソトースを召喚するための魔術書を見つけたなら燃やしてください。
【まとめや真相】
2814年、ヨグ・ソトースにより世界が滅んだ。
完全なる人類滅亡を回避するため、宇宙船に卵巣を乗せ人類が生きていける星が見つかればそこで人類をもう一度繁栄させるという計画が遂行されたが、そのためには人類を育てる存在が必要だった。
数光年の宇宙の旅に耐えられる人間はいないため、ロボットを乗せるしかなかった。しかし、アイは人間を育てられるほど人間らしくはない愛を知らないと判断され、アイの母親である由里香の脳を移植した存在マザーが選ばれた。
アイの父親である明良はアイがテストに落ちた理由を考察していくうちに、絶望を知ることが人間に近づく方法なのではないかという説に辿り着く。明良の死亡によりマザーが狂い、アイを完全に拒否した時、アイは絶望を知り人間となる。
【読まなくてもいい感想】
作るのもまわすのも苦しんだシナリオです。
パスワードはアイの誕生日でもよかったけど、定番すぎてちょっと飽きてきたかな~と思って!