【はじめに】
このシナリオは探索者2〜4人向けにつくられている。
オリジナル要素を含んでいる。
戦闘あり。
推定プレイ時間(ボイセ):2〜3時間
推奨技能:戦闘技能(日本刀おすすめ)、地質学、目星


【導入】
舞台はちょっとした田舎の「伊那鳴村(いななりむら)」です。
地質学持ちの探索者は、伊那鳴村の祖母にあたる人物から連絡がきます。
内容は、ここ数年、村の田んぼや畑の収穫がどんどん不作になっていっているから、土壌や環境に原因がないか、探索者に調べて欲しいと依頼してきます。
探索者は祖母の田舎へ調査のため向かうことになります。
探索者はこの村については、数度遊びに行ったことがある程度で詳しくは知らないという設定にしといてください。


【伊那鳴村下調べ】
探索者が伊那鳴村に行く前に<図書館>で下調べした場合、伊那鳴村は農業が盛んな村で米や野菜、果物などブランドがついているものも数多くあるほど実り豊かな村であることがわかります。村の名前も稲成からきています。
ただし、ここ十数年は不作が続き、年々収穫が落ちていっているようです。
また人口も村の規模にしては、過疎化が進まず安定しているということがわかります。が、最近は人口も下降気味。


【伊那鳴村】
伊那鳴村は、駅から離れると田んぼや畑がたくさんありますが、駅の付近はそれなりに商店街やスーパーなどもある、そこそこの田舎といった様子です。
ただ、商店街は閑散としており、閉店している店もちらほらと見かけます。
探索者の祖母の家は、駅から離れた場所にあります。車で来た方がいいと思います!


【祖母の家】
祖母の家は手入れが行き届いた古い日本家屋です。
探索者のおばあちゃんは、久しぶりに会える可愛い孫が遊びに来たことにとても喜びますが、不作の件を切り出すとかなり気落ちしてしまいます。
「この村はねぇ、農業だけが頼りでやっとったんよ。
一時は、駅の方に色々お店も出来たが、結局人がおらんからねぇ…潰れてしもた店もたくさんあるんよ。
それでも、商店やっとった人らも農業と兼業やったから、美味しいもんが収穫できとったころは、それを糧にやっていけた。
でも、ここ数年は不作でどんどんひどなるばかりじゃ。
このままじゃ村のもんは飢えて、この村を出て行かなあかんくなる。
土が痩せ細っているのはわかるんじゃが原因が分からんのじゃ。」
そう言ってため息を吐きます。


【田んぼの土】
土壌調査ですが<地質学>に成功すると、土はかなり痩せ細っていること、原因は肥料不足であるとわかります。
もし、<地質学>に失敗した場合は、よく分からないので肥料を調べてみようとを思いついたことにしましょう。
それをおばあちゃんに伝えると、おばあちゃんは「肥料なんか使ったことない。ここの村のもんはそんなもん使う人見たことない。」と答えます。
肥料なしで農業を行うことは、ほぼ不可能に近く、慎重にやらなければ土が痩せ細るのは当然の結果であることを地質学持ちの探索者は知っています。
当然のように肥料も使わずにずっと豊作が続いたのは、探索者の目からみて奇跡に近いです。
しかし残念ながら、土はもうすでに回復の見込みがないほど痩せ細っており、それは村のどの田んぼや畑も同じ状態です。
もし、それをおばあちゃんに伝えるのなら、おばあちゃんはショックのあまり寝込んでしまいます。


【稲荷神社】
寝込んでしまったおばあちゃんは「もうお稲荷様に頼むしかねぇ。歳を取ってから階段が辛くて随分と行っとらんかったが、拝みに行く。」と言って立ち上がりますが、すぐによろけてこけてしまいます。
おばあちゃんは「うぅ…すまんが、わしの代わりに稲荷神社のお稲荷様にいなり寿司をお供えに行ってくれんか?」と言ってお金渡してくれたあと、稲荷神社の詳細な場所を教えてくれます。
もしかしたら探索者はおばあちゃんも一緒に連れていこうとするかもしれませんが、おばあちゃんと稲荷は後で会った方が探索者へのヒントにつながるのでおばあちゃんはしんどそう的なことを探索者に伝えましょう。

稲荷神社とはこの村にある唯一の神社で、豊穣と多産の神だということも聞けば教えてくれます。いなり寿司はスーパーとかで買ったらいいんじゃないでしょうか!
稲荷神社は、近くの山にありますが、車では入れず、長く細い階段を上っていかなければなりません。
お年寄りにはかなりきついだろうな、ということがわかります。
また長い間、人が入ってなかったせいか細い階段の脇からは草が伸びほうだいになっており、ほぼ廃墟のようです。
20分ほど階段をのぼり、やっと神社の鳥居が見えたと思ったさきにあったのは全く手入れされていない神社で、まさしく廃神社と呼ぶのが相応しいさびれた神社でした。宝珠をくわえた稲荷像にも伸びた雑草が絡み付いています。
<歴史>または<オカルト>に成功すると、稲荷がくわえている宝珠とは神の霊力の象徴であるということがわかります。
しかし、探索者が社の方を見ると小さな人影があることがわかります。


【稲荷大明神との出会い】
人影は探索者が近づいても全く気付かない様子で頭を抱えて座っています。
年齢は10〜12歳くらいで、巫女のような姿をしていて、何よりおかしいのは頭から薄い金色のピンと立った獣のような耳が二つ、後ろからはふさふさの大きな尻尾のようなものが見えています。
そしてなにやらぶつぶつと「どうすればいいんじゃ…あれがないと…取り返さないと…」と言っています。
探索者が声をかけると彼女はびくっと肩を震わせ、ゆっくりと顔をあげます。
そして驚いた様子で「我の姿が見えるのか…?」と聞いてきます。
探索者が肯定すると「もう姿を消す力もないのか…。」とがっくりしたあと、言葉を続けます。
「まあ、ちょうどよい。そちらよ、我は稲荷大明神である。偉大な我に力添えをすることを許そう。
昨夜、ふとどきものがやってきて、神器である十束剣を盗んで行きおった。
我は外のことはよく知らぬ。一緒にそやつから取り返すがよい。」
彼女は、かなりえらそうな態度ですが、もし探索者がそれを断ると目に涙をいっぱい浮かべ「えらそうにして済まぬ!手伝ってくれ〜!」と頼んできます。
逆に受け入れると「よいのか!?そなたたち、良いやつじゃの〜!」ととても喜びます。
稲荷大明神の性格は、えらそうにしているものの本当は世間知らずの根は素直なお嬢様といった感じです。

Q.誰が盗んだの?
A.若い男じゃった!顔はしっかり覚えておる!
あやつ、始めは賽銭箱を漁っとたんじゃが、少ないとわかると本殿の中に入ってきおった!
止めようとしたんじゃが、足が早くての…追いつけんかった。
バイク?とかいうやつに乗っていってしもうた。大きい音じゃった。

Q.神の力で盗んだの止めれなかったの?
A.我ができることは、赤子を授かりやすくすることと豊作にすることだけじゃ!
しかしその力も、なぜか近頃はめっきり弱くなってしもうた。幼い姿なのもそのせいじゃ。
本当はもっと豊満な体をしておる!

Q.十束剣とは?
A.とある女が置いていった剣じゃ。
元々霊力が宿っていたが、さらに我の力を何十年もかけて宿らせた特別な剣じゃ。
いざという時のためにここに奉納されておった。

Q.いざという時とは?
A.実はな、我の中には邪神が封印されておる。
もし封印が解けてしまった時、その剣でやっつけるのじゃ!

Q.とある女?邪神が封印されてるとは?
A.数百年前か…大飢饉が起こってな、我も力を尽くしたんじゃが及ばず何人もの民たちが飢え死んだ。
それで、餓えた民たちは邪教に手を出してしもうたんじゃ。
民たちは、生け贄を何人も差し出し儀式をして、豊穣と多産の神を呼びだした。
だがな、それは恐ろしい邪神じゃった。見たもののほとんどが狂い、その上にその邪神は目につくものすべてを破壊し殺した。
もう、何もかも終わりじゃと思った時、ひとりの女が現れたんじゃ。
確かどこかの神社の娘と言っておったな…、その娘は自分はこういうことに詳しい、かなり強い邪神だが我が協力すれば封印できると言ったんじゃ。
我はもう民が死ぬのは見たくなかった。二つ返事で我の中に封印することを聞き入れて、無事その邪神は封印されたというわけじゃ

Q.なんて呼べばいい?
A.我に名前はない!
堅苦しいのは嫌いなので稲荷でよいぞ。敬語もいらぬ。

Q.稲荷寿司あげるよ
A.我はこれが大好物じゃー!
感謝するぞー!といって美味しそうに食べる。


男の顔がわかるのは稲荷だけなので連れていくことになると思いますが、もし探索者たちが置いていこうとしたら稲荷は一緒に着いて行くと言います。
置いていくとシナリオがうまく進まないと思うのでKPは連れていくように、常に一緒に行動するようにキーパリングしてください。
探索者が稲荷に目立つから耳とか尻尾を隠せと言うと、稲荷は「なぜじゃ?みんな我が稲荷大明神と知ったら驚くかもしれんが、喜ぶぞ?隠す必要などない!」ときょとんとします。それなりに傷つけないRPをしたうえで何らかの技能を使わないと隠せないでしょう。


【男について聞き込み】
探索者は大きい音のバイクというヒントから男を探すことになります。
もし、探索者が気付いていなければ<アイデア>を振らせ、大きい音のバイクに乗っているということは暴走族ではないかと気付かせましょう。
暴走族について村で聞き込みすると、下記の情報が得られます。
・夜中に、とても大きな音でバイクが20台ぐらい暴走している。
・おそらく若者の集団だろう。
・駅の方でたむろしているらしい、商店の店主が迷惑していた。

一通り話が終わると、稲荷の方を見て「変わった格好だ」というようなことを言ってきます。稲荷は「我は稲荷大明神である!」と宣言します。もし稲荷の恰好を隠していた場合、風とかが吹いて耳が出ちゃったことにしましょう。
その稲荷の言葉に村の人は「あはははは、神様なんて信じてるのかい?可愛いお嬢ちゃんだねえ。」と馬鹿に去っていきます。
そう言われると稲荷は明らかにショックな顔をし、下を向いてふるふると震えます。
すると、稲荷の体の周りに突然黒い煙のようなものが現れ、稲荷の腕の色がまだらに黒い色に変色していきます。
SANチェック
0/1

稲荷はそれに驚き、自分の力が弱まって邪神の力が抑えきれなくなっていること、急がなければならないことを探索者に告げます。


【商店での聞き込み】
たむろの場所を聞くために、商店で聞き込みをする必要があります。
駅の方に行くと、稲荷はきょろきょろと周りを見渡し、物珍しそうにしています。
商店は田舎の小さな商店といった感じで50代のおっさんが1人で店を切り盛りしているようです。
店に入るとすぐに稲荷が大きな声をあげます。
「こ、これはなんじゃ…!なんと愛らしい!!」
稲荷が手にしているのは、狐のキーホルダーで稲荷はとても気に入ったようです。
ただし稲荷はお金を持っていないので、諦めます。
もし探索者がキーホルダーを買ってあげると、とても喜びます。
「よ、良いのか!?大事にする!そうじゃ!これが感謝の印になるかわからんが…」そう言って、首と服の胸のあたりをごそごそするとネックレスを取り出します。
そのネックレスの先には、丸い透き通った直径2cmほどのガラス玉のようなものがついています。
「これはな、我の宝珠じゃ。この中に我の力が入っておる。我とこの宝珠は一心同体といえる大切なものじゃ。しばらくの間じゃが、霊力を授けてやろう。何か授けて欲しいものはあるか?」
これは、武器(拳なら手、蹴りなら足)に霊力を付与することができます。最後の戦闘で役にたちます。
稲荷に霊力を授けて欲しいものを差し出すと宝珠をそっと近づけると、宝珠とその武器が一瞬だけ光ります。
そのあと稲荷は嬉しそうに狐のキーホルダーをネックレスにつけます。

店主から暴走族について聞き込みをすると、「ああ、暴走族ね。いるよ。以前は毎晩、店の前にたむろしていて迷惑だったけど、最近はいなくなってくれて清々してたんだよ。今は、昔ボーリング場があったところでたむろしてるみたいだよ。」と答えます。

話を聞き終わると、稲荷が嬉しそうに店主に問いかけます。
「あれは神棚じゃな?そちは神を信じておるのじゃな?」
稲荷が指差す先には、確かに神棚が飾ってあります。
しかし店主は「変な格好して変なこと聞くお嬢さんだな。いや、あれは俺の親父が残したもんだよ。俺は神なんて信じてないよ。」と答えます。
そう言われるとまた稲荷はショックを受けた顔をします。そして、また稲荷の周りに黒い煙が現れ、手足が伸び、胸やお尻が膨らみ、耳や尻尾の毛並みもよりふわふわの大人の女性に成長します。
肌の色は暗いもののその姿はとても美しく妖艶な雰囲気が漂っています。
SANチェック
0/1

稲荷は自分の異変にとまどいながらも「力が戻ったのか…!」と喜びます。
ただし、探索者が<目星>に成功すると、稲荷の爪がするどく真っ黒に伸びていることがわかります。
それを稲荷に指摘すると、稲荷は愕然とし「違う…我の力が強まったのではなく、弱まったのだ。我の力が弱まり、封印が解けかけ邪神の力が我にも影響を与えてるんじゃ。急がなければなるまい。」と言います。

店主も驚きますが「手品かい?」と聞くだけで、神の存在を認めることはありません。


【ボーリング場】
ボーリング場に向う途中、<アイデア>に成功すると視線を感じます。
しかし、誰が視線を向けているかはわかりません。
ボーリング場は1階建て古いです。
かなり昔に閉鎖されたようで、窓も入り口も裏口もシャッターが下ろされ頑丈な鍵がかけられています。
しかし、外には20台ほど改造されたバイクが駐車されています。
探索者は<聞き耳>で中の様子を確認しようとするかもしれませんが、防音になっており何も聞こえません。
中に入るためには鍵が必要です。
もし、探索者が<鍵開け>技能やシャッターを壊すなど、ゴリ推しで入ろうとしたら【ボーリング場へ潜入】へ飛ばしてください。


【村役場】
ボーリング場の鍵を入手するためには、土地所有者を調べる必要があります。
これは村役場の土地台帳で調べることができます。技能は必要ありません。
土地台帳には、現在はなんと探索者のおばあちゃんが所有者だということが分かります。
もし、探索者が神社の所有者を調べると宣言するなら、桜井 健吾という人だと分かります。


【おばあちゃん家】
おばあちゃんにボーリング場のことを聞くと、仲良くしていた知人が所有していたものだったが、知人が亡くなり自分が相続することになった、しかし相続しただけで管理は管理会社に任せっきりだということが分かります。鍵も管理会社に預けているということが分かります。
管理会社は桜井管理会社です。

おばあちゃんは、稲荷のこと見つけると、「おや…?どこかで会ったことがあるかね…?」と尋ねます。
稲荷はすこし考えたあと「…千代ちゃんか?昔よく神社で遊んでおった!」そう答えるとおばあちゃんは「まさか…、あなたは稲荷大明神様か?」と言います。
稲荷はその言葉に嬉しそうに肯定するとおばあちゃんは「あぁ、小さいころあの神社で鞠を探しているとあなた様が見つけてくださった。もう一度会えるとは…。」そう言って拝みます。すると、稲荷の体が光に包まれどす黒い色から普通の肌色に少しだけ戻っていきます。
稲荷の姿は、普通は見えませんが、たまに子供や動物が見える場合があると稲荷は教えてくれます。

ここで<アイデア>に成功すると、稲荷の力は信仰心によって強まったり弱まったりするということが分かります。
これに気づいた探索者は、村の人たちの信仰心を取り戻そうと<説得>などして回っていくかもしれません。
しかし、神を信じろと<説得>するのは、短時間では難しいです。
まともな人ならば、見知らぬ人に「神を信じろ」と説得されても応じないでしょうから。


【桜井管理会社】
桜井管理会社は駅の付近にあります。
駅の付近に戻ってくると<アイデア>に成功で、またどこからか視線を感じます。
桜井管理会社はひょろひょろの気の弱そうな50代の男性が1人います。
彼は桜井健吾と書かれた名刺を差し出してきます。
ボーリング場に暴走族がたむろしている噂がある、というと顔を真っ青にして答えます。
「おそらく、それは私の息子です…。
ここから鍵を持ち出し、合鍵でも作って出入りしているんでしょう。
息子は暴走族の親玉のようなんです。
なんども息子に人の迷惑になることはやめろと言っているんですが、もう私のいうことは全く聞きません。
一度、警察にも相談しましたが、警察にも息子の知り合いがいるようで、警察が駆けつけるころにはその場から逃げているんです。
私にはもう手をつけられません。」
そう言って嗚咽を漏らしながら泣き出します。
神社の賽銭を盗もうとしていたことを伝えると、おそらく金目当てだろうと答えます。

ボーリング場の鍵は渡してもらえます。


【ボーリング場に潜入】
探索者が鍵を開けようとしていると、後ろから20人ほどの暴走族が現れ囲まれます。
「俺らを探ってるのはお前らだな?何の用だ?」
探索者はなんらかの言い訳を言おうとするかもしれませんが、暴走族は「ボスのとこに連れて行け」と言って探索者を拘束しようとします。
暴れるかもしれませんが、相手は20人なので逃げられません。
探索者がどうしても納得できなさそうなら、戦闘処理してノックアウトさせてもいいです。
20ターンあれば負けることはないでしょう。

探索者がなかなかボーリング場に入ろうとしなければ、稲荷の症状を進行させ急がせてください。


【暴走族の親玉との対面】
探索者と稲荷は縄で後ろ手に拘束され、ボーリング場の中に連れていかれます。
中は広いですが薄暗く簡易的なスタンドライトがいくつか置いてあるだけです。
奥に進むとボロボロのソファに、頭をオールバックにした若いながらも威圧感のある男が座っています。そいつがボスのようです。
それを見ると稲荷が「奴じゃ…十束剣を盗んだのは奴じゃ」と小さな声で探索者たちに伝えてきます。
<目星>に成功で、ボスの後ろに十束剣が置いてあることがわかります。
ボスは、ひくい声で「ちょうど暇だったんだよ。いいおもちゃが見つかった。」と言うとニヤリと笑います。
「俺はな、ただただ人を痛ぶるのが好きなんだ。誰でもいい、1人連れてこい。」と仲間に命令すると、すぐに稲荷が「我を連れて行け!こやつらを傷つけるのは許さん!民を守るのは神の役目じゃ!」と叫びます。
そう言うと、そこにいる暴走族たちが大声で笑い始めます。
「神ってなんだ?」「こいつ頭おかしいんだろ、変な格好してるしよ」「この耳はなんだよ」
そう言って耳を思いっきりひっぱります。本物の耳なので、稲荷は痛がりますが、「よくできたおもちゃだな〜」と信じません。
すると、稲荷の周りにまた黒い煙が渦巻き、稲荷の身体がまだらに黒く変色していきます。

探索者は稲荷が連れて行かれないように、自分にヘイトを集めようとするかもしれませんが、変な格好や発言をしつつもとても美しい稲荷を弄ぼうと暴走族たちは稲荷を連れていってしまいます。


【邪神の解放】
稲荷は、ボスの前に連れて行かれると、まずお腹に一発蹴りを入れられます。
痛さのあまり小さな呻き声をあげてうずくまっていると、さらに十束剣を取り出し「こいつの切れ味、試したかったんだ。動くなよ?血だらけでヤりたくねえからな。」と言って稲荷の服を剣で切り裂きます。
服が切り裂かれると、ボスが宝珠のついたネックレスを見つけます。そしてそのチェーンを無理やりひきちぎります。
稲荷は「やめるんじゃ!!それを返せ!!」と必死で叫びますが「金目のモンかと思ったが、ただのガラス玉みてーだな。こんなもん返してやるよ。」と言って地面に叩きつけます。

描写『宝珠が割れたその瞬間、あたり一面に黒い煙が渦巻く。
動揺する族たちを尻目に、おぞましい声が響く。それは稲荷の声にどこか似ていた。
「馬鹿な人間共よ、まさか自分たちの手で我の封印を解くとは。」
煙がはれた時、そこにいたのは稲荷ではなかった。
天井に届くかと言うほどの大きさ、黒い触手、先端が黒いひずめになっているねじれた足、おぞましいその姿とは裏腹に美しい稲荷の顔が全てを見下すように笑っていた。
その怪物は今まで自分をいたぶっていた男をひずめで踏みつけると、男は蟾蜍のような声をあげ内臓が飛び散らせながら死んだ。』

<シュブ=ニグラス(稲荷により弱体化)>ルルブp216
SANチェック
1D6/1D20
STR30 CON34 SIZ26 INT21 DEX20
耐久力30
DB +2D6
触手 100% 自動的にひっかける
踏みつけ 75% 2D6
装甲 魔術的な武器や火や電気のみダメージを与える、毎ターン2ポイントの回復
※探索者の人数によってステータスは修正してください。


目の前に怪物が現れたことにより、暴走族たちはパニックになります。
みんな逃げ出そうとしますが、シュブ=ニグラスは手当り次第に掴まえて殺していきます。

探索者たちは縄でむすばれているので逃げるのは難しいですが、その騒動で足元に十束剣が飛ばされてきていることに気付きます。
鞘は抜かれているので<DEX*5>に成功か、もしくはそれなりの技能を使えば縄を切ることができます。
縄を切ることができれば、そこからシュブ=ニグラスとの戦闘になります。

シュブ=ニグラスに攻撃して効果があるのは、十束剣か稲荷に霊力を授けてもらった武器のみです。

<十束剣>
シュブ=ニグラスに効果がある魔術が付与されている。
2D10+DB
耐久力20

シュブ=ニグラスに攻撃された場合、一度だけ「稲荷が神様だってこと信じてる!だから、力を取り戻せ!正気に戻れ!」的なRPをすると1回だけ攻撃をやめてくれます。
掴まれてるときとかに言うと離してくれるよ!


【エンディング】
戦闘に勝つと、シュブ=ニグラスは叫び声をあげます。
あたりは光に包まれたかと思うと、稲荷が元の姿になって現れます。
しかし、姿は透けており悲しそうな顔をしています。

「感謝する。邪神は退散した。
そなたたちのお陰じゃ。
我は、たくさんの命を奪ってしまった。
もう神でいることは許されん。
いや、神などもう必要ないのかもしれん。
民たちは、自分たちの力で十分に困難に立ち向かえる力を手に入れたんじゃ。
最後に神として、一つだけ奇跡を起こそう。
さよならじゃ。最後まで信じてくれてありがとう。」

そういうと消えていきます。
光が消えるとそこには暴走族の遺体、救急車やパトカーなども駆け付けています。
この件については暴走族同士の内乱ということで片付くでしょう。


数日後、おばあちゃんがとても喜んで探索者たちに声をかけています。
「土がもとに戻った、これで作物がまた立派に育つ!稲荷大明神様のお陰じゃ~!」と言っています。
実際<地質学>で調べると、土に栄養分が戻っていることが分かります。

村はお祝いに、稲荷神社で祭りが行われることになります。
稲荷神社はきれいに掃除され、村人たちはとても楽しそうにしています。

<目星>に成功すると、神社の茂みがユサユサ揺れていることが分かります。
茂みをのぞくと、1匹の狐が楽しそうに村人の様子を見つめています。
探索者に気付くと、足にすりすりと絡みついたあとタタッと茂みの方へと逃げていきます。
首にはあの狐のキーホルダーがついていました(キーホルダーあげてた)。


【クリアご褒美】
邪神をやっつけた!
SAN値1D10の回復


【まとめや真相】
数百年前、大飢饉を逃れようとした村人により呼び出されてしまったシュブ=ニグラス。
村が滅びるのを恐れた稲荷大明神はそれを自分の中に封印する。
しかし、稲荷大明神の神力は村人の信仰心により保たれていたもので、信仰心が薄くなった現代において稲荷大明神の力もすっかり衰えてしまっていた。そのせいで、邪神の封印は解けかけ、多産や豊穣の力も弱まっていた。
さらに村の人は稲荷のこと信じてくれないし、のヤンキーに封印が解けた時用に用意していた十束剣は盗まれ、稲荷の力の証である宝珠は割られ、もう大変!
その結果、邪神は復活してしまい、稲荷は神の力を失ってしまうことになる!
でも、もうみんな信仰心ないし神がいなくても大丈夫だよね!稲荷は悲しいけど狐に戻る!
バッドエンドの条件:稲荷と出会ってから24時間以内に稲荷の中の邪神を倒さなければ、バッドエンド!


【読まなくてもいい感想】
どうでもいい情報ですが、以前邪神を封印した女性は「首切り様」や「曾洲島の双子」で出てきた神社生まれのTさんです。Tさんは時空を越えて邪神をなんとかしてるんだ…大変だ…。便利なキャラだぜ!